背景の歴史的事実にふれて
H・K
 
 どうしても、長い間憲法とつきあっているので、対訳的な表現になってしまいました。ですから、以下の訳は、皆さんが考えた案の参考にしてください。

 日本社会のあり方を決めるのは、いままで一人の天皇でしたが、これからは国民一人ひとりの考えを基にして決めることができるようになります。これを主権在民といいます。国のあり方について、個々の課題を決める具体的な方法は、国民一人ひとりが平等な権利を持つ公正な選挙によって選ばれた代表者です。しかしここが最も大切なことですが、代表者は、何でもしていいのかというとそうではないのです。国民の基本的な人権の侵害や戦争を起こす、あるいは参加することなど、国民の大切な命を脅かすようなことは絶対できないのです。
 なぜならば、代表者たちが行う国の政治は、主権者である国民一人ひとりの生きる権利を豊かにするために存在するからです。人類は長い歴史の中で、王様や一部の力を持った権力者が国民の権利を勝手に奪った時代もありました。戦前の日本もそうでした。しかしそうした時代に行われた、人が勝手気ままに他の人の命を奪うようことは誤りということに気がついたわけです。この憲法は、一人ひとりの命と権利こそが最も価値あるということにたどり着いた人類の貴重な経験を基本にしています。このことはいかなる方法、いかなる人を持ってしても決して否定することはできません。
 さらに、この憲法は日本国がアジア諸国に侵略し、多くの人々の生命を奪った第二次世界大戦の事実を重く受け止め、日本国民は、二度と戦争を起こさないことを世界に対して宣言します。それとともに、その決意を基に世界のあらゆる国や地域で起こるかもしれない戦争、あるいは占領や他の国や人々を従属させ、その権利や生命を奪おうとする行為に対しても世界の人々とともにあらゆる平和的手段を用いて阻止することを決意します。
 この考え方をすべての日本国民が世界のあらゆる国と地域に広め、ともに努力すれば、世界のすべての人々が平和で、生きていくための権利が保障される社会を、必ず実現できるでしょう。
 ですからこの憲法を手に入れた日本国民は、誇りを持ってその内容の実現をめざし、近い将来、日本だけでなく世界のすべての人々が平和で人権豊かな社会を実現できるよう、今日から歩み始めるのです。
 
最近、政治家の歴史に対する不誠実さが著しいことに危険を感じているので、前文では明文化していないこの憲法の背景にある歴史的事実に触れることと、人権を「命」の尊さとして表現することで、わかりやすくなるのではないかと考えました。