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「ドイツ国旗とワールドカップ」
2006年11月1日
執筆者:MS
 

配偶者の転勤によりドイツに住んで3度目の夏を迎えようとしている。日本人の多く住むこの街では日本語だけでも生活出来てしまう。ゆえにドイツ語に悪戦苦闘する人、そんな日々をササッと潔くやめ、趣味に生きる人と色々。前者を選んだ私。合計、4つの語学学校をはしごすることに。中でも一番キツかったのはやはり大学の構内にある語学学校。しかし、この大学で幸運にも一人のドイツ人女性と知り合うことになる。実は彼女、私の「ご近所さん」なのだ。

ドイツに住んで1年半が過ぎたある日、マンションの中で上に住む女性に声をかけられた。日本の化粧品を買いたいのだがどこで買えるか知りたいという。たどたどしくドイツ語で話す事5分。どうやら彼女は日本文化にとても興味があるらしい。そして、30歳をこえてから様々な文化について大学で勉強を始めたというガッツある女性。偶然にも私の語学学校がある大学の学生というではないか。意気投合した私たち。ちょくちょく大学の休み時間に会うように。語学学校が終了すると、今度は家でお茶をしたり、お互いの国の料理を一緒にするように。年も近く、お互いデザイン系の会社で働いたこともあってか、私のひどいドイツ語にもかかわらず、彼女との時間はいつも楽しく、興味深いものだった。

彼女と出会って数カ月が過ぎた頃、ドイツにワールドカップが到来した。連日、街はお祭り騒ぎ。街中、黒・赤・黄のドイツ国旗で埋め尽くされた。ドイツが3位まで勝ち進んだことにより人々は興奮の絶頂に。そんな中、いつものようにお茶をすることになった私たち。話題は勿論、ワールドカップ。その際に彼女が語ってくれた話によって、ワールドカップへの印象がガラリと変わることに。

まず、このワールドカップはドイツにとってとても重要な意味をもつ大会だったのだという。3位まで勝ち進んだことだけでなく、それ以上に得たものが大きかったのだと。戦後、ナチスの犯した行為により、ドイツは他国の監視の目にさらされる。9カ国と国境を接するドイツ。常に"他国の目"は無視できない。ナチスを彷彿とさせる国旗掲揚はおいそれとはできないものになっていたらしい。東西ドイツが統一し、初めて多くの国民がドイツ国旗を胸をはって掲げたのが、今大会なのだという。

戦後60年以上たった今でもヨーロッパにおいてナチスの負のイメージは強い。ドイツ人自身も、ナチスを恥じている人も多いように思う。彼女もその一人。そのため、戦後はどこか、自分の国を心から誇れることがなかったのではないだろうか。しかし、今大会は多くの人が、心からドイツに誇りを感じたのだという。そういう意味で、このワールドカップはドイツ人の精神面にもたらした効果が大きかったのだと。

ドイツに暮らして2年半。様々な国の人と知り合う機会も多い。勿論、中国人、韓国人、台湾人等のアジア人とも多く知り合う。彼らと親しくなればなるほど、60年も前に起きた「戦争」を意識せざるを得ない。他国の目にさらされることのない日本。すくなくともさらされていることが意識しにくい日本。そこで育った私にとって、同じ敗戦国であるドイツ人の彼女の言葉には、深く考えさせられた。

 
 

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