HuRP通信 2022/08/01
参議院選挙結果と9条改憲をさせないために
第26回参議院選挙の選挙区の投票率は52.05%(比例区は52.04%だった(十代の投票率は34.49%))。半分と少しの有権者の投票率の結果、自民党は単独で改選議席過半数を獲得(改選55議席から63議席へ)、連立政権与党は、自民・公明とあわせて参議院で過半数を大きく上回る146議席を確保した。その結果、参議院でも改憲容認ないし推進の立場を示す日本維新の会と国民民主党の両野党など、いわゆる「改憲4党」の総議席数が改憲発議に必要な議席定数の3分の2を大きく上回ることとなった(177議席)。これで衆参両院とも改憲発議に必要な3分の2の議席数を満たすこととなった。言い換えれば、違憲の選挙区制度のもとで、半分強の投票率によって憲法尊重義務(99条)を守らない国会議員が国会の3分の2を占めたということである。
さて、選挙戦終盤の7月8日に安倍元首相が銃撃され死亡する事件が起き、これが選挙にどう影響したかは不明だが、それ以上に安倍を筆頭に自民党や改憲推進の政党関係者(議員)が、霊感商法などで社会問題を起こし続けている旧称「統一教会」(現在「世界平和統一家庭連合」)と1960年代以降深い利害関係が続いていることが浮き彫りになった。実はこの件も触れたいところだが、字数の関係もあり、ここでは選挙結果を受けて、今後起こる改憲議論の問題に絞って述べたいと思う。現政権の本気度は不明だが、安倍元首相の「遺志」を継ぐことを強調し、憲法「改正」に取り組むことを表明している以上、国会において改憲議論が何らかのかたちで動く可能性は高い。ただし、改憲を主張する政党間で具体的項目について主張が異なることも確かで、直ちに改憲案全体がまとまるようにも思えないが、しかし憲法9条改憲の大枠については政党間での調整が進む確率が高いのも事実である。なぜならこの国の権力者たちは戦後一貫して9条を改憲して「普通の国」=「軍隊を持って軍事的プレゼンスを行使できる国」にしたいと考え行動しており、9条改憲は最初から改憲の最優先課題だからである。戦争によって誰が被害を受け、誰が利益を得て、その結末はどんなものだったのか、1945年の敗戦から今日まで、この国は戦前日本と戦争についてまっとうな総括をしてこなかった。戦争犯罪の追及や戦後補償問題を正面から取り組まない、平和主義の徹底と憲法前文にある国際的にも平和の希求を主体的に取り組んでこなかった。
しかし、少なくない市民が戦争をした国だったという反省から日本国憲法の核心を理解し、9条改憲を実現させなかったことも事実だ。そのせめぎ合いはこれからも続けなければならないだろう。本当であれば、早く改憲を阻止し、この憲法の下、世界の市民と連帯して国際的な平和を実現するためにこの国を貢献させなければならないのだが。
冒頭触れたように国会での憲法「改正」発議に賛成する国会議員数は3分の2以上となったが、憲法96条は「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と規定しており、仮に両院総数の各3分の2が賛成しても、国民に発議するに過ぎない。
最後は国民が決めるのだ。ロシアのウクライナ侵略戦争を直ちにやめるべきだと思う人は多い。その思いは9条と通底している。50%強の投票率で決まった国会議員や政府に全権委任をせず、有権者の過半数以上の意思で改憲ではなく、憲法を実践できる社会にする。その権利は国民にしかない。
(H.K)