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HuRP通信 2023/02/06
若者にとって「革新」とは何か(上)
 どうして、未来のことを考えると、こうも絶望的な気分になるのだろうか。
 別にぼくはこれといって将来の希望もないというのに。
 いつも同じで、ワンパターンで、退屈な日々が、これからもずっと続く。
 いつまで?たぶん死ぬまでだ。なんのために?たぶん、死ぬためだけに。

 ヒットした大樹連司さんのライトノベル『勇者と探偵のゲーム』からの引用である。ある街の女子学生が事故死する。ただの事故死を邪教教団による生け贄の結果と偽装する。大きな物語に仮託しないと生きられない若者たち。凡庸で矮小な自分の生は傍観する。生きるために戦う力はすでに奪われてしまった…。

 40歳以下位の若年層(以下「若者」という)の「保守化」が止まらないようだ。国政選挙の度ごとに自民党の支持率が上がり、維新の党への投票も増えている。この傾向が続くと仮定すると、今後も政権党の支持は自動的に強化される。この問題をめぐっては多数の議論があるが、視点の異なる以下の分析はいずれも当たっていると思われる。複合的で複雑な要因がある。

 社会学者の本田由紀さんは、2021年8月に刊行した『「日本」ってどんな国』で、経済を重視する物質主義、競争を重視する新自由主義、「人生は予め決まっている」という宿命主義の3つを要因としている。新自由主義の意識は「勝ち組」である自己中心的な高階層の男性に強いとも指摘している。

 積極的な保守化ではなく、経済の低成長ないし脱成長時代も背景に、波風を立てず大過なく社会生活を過ごすための政治的無関心さを指摘する向きも多い。これは、「非政治化の政治」の継続を企図した保守政治の統治技法の成功でもある(中西新太郎「若者保守化のリアル」など)。スウェーデン大使館でこの国のジャーナリストから、日本の政治学の大学院の学生の間でさえ政治の具体的な問題に関する会話が殆ど存在しないことに、「今まで日本は民主主義の国だとばかり思ってきました。大変な誤解でした」とホンネとも皮肉とも区別がつかない話を聞いた。国政選挙における有権者全体の投票率は1990年頃までは70%前後で推移していたが徐々に低下し、近年は50%強に下がった。国際比較では200か国中130~150位である。その中でも20代の投票率はさらに低く30%台だ(スウェーデンの同世代は85%)。

 そのほかに、正規を希望しながら不本意な労働を強いられている非正規労働の若者や、専門学校・高校などの大卒でない若者に焦点を絞って解説している本も多い。この中では、土井隆義さんの『「宿命」を生きる若者たち』にフィットした。親の経済状態、自分の生まれつきの資質や能力(努力できる能力も含む)という生得的属性を宿命的なものとして受け入れ、「あきらめる」前にそもそも人生に期待することもしなくなった。本田さんの3つ目の要因と重なる。宿命論が、世界でも異例に高い自己責任論と結合すると、政治経済の制度的枠組みと闘う意思は起こらない。「拍子抜けするほどおとなしく、活気と意欲に乏しい若者たち」(同書106ページ)。保守政治はた易いものだ。
 橋本健二さんのように「新・階級社会」と呼ぶか穏当に「階層社会」と呼ぶかの違いはあるが、格差の固定化は本人の人権を侵害するだけでなく、低収入のため購買力を低下させ日本経済にとってもマイナスであったり、社会を分裂させ殺伐たるものにしている。

 政治学では、遠藤晶久さんの『イデオロギーと日本政治-世代で異なる「保守」と「革新」』も注目される。2020年に朝日新聞と毎日新聞の論壇でも紹介された。少数派への転落も射程距離に入った1990年代以降の自民党は、小選挙区制やビラ配布制限などの政治改革、内閣中心制への行政改革、郵政民営化に代表される公共空間と市場の改革、司法制度改革、デジタル資本主義改革など「改革」を矢継ぎ早に提起してきた。憲法改正も「憲法改革」だ。これが若者の目には革新的に映るという。最も革新的な政党は自民党であり維新の党である。反対に、一番保守的なのは共産党だという。立憲民主党から衆院の小選挙区に立候補して敗れた新進気鋭の知人である若者政治学者による今年5月の反省会に出席した。曰く「改革を主張する維新の党の戦術は選挙民にアピールしてすごい。我が党も見ならうべきだ」。何が革新かについての若者の理解は、私が彼ら彼女らと話した経験に合致している。

 皆さんはどう思われるだろうか。問題提起としたい。
(蓼沼)

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